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薔薇と花嫁と百合妊娠

 ジューンブライド、6月に式を挙げた花嫁は幸せになれる、そんな他愛ない話はどこの町でも、聞いた事があるだろう。それはこの夜見山でも、囁かれていた。

 「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。工房m」という、ゴシックロリータ、俗に言う、ゴスロリのドレスを纏った球体関節人形が売られているアトリエと店を兼ねたコンクリートの無機質な建物で、ここの主だった霧果が作った人形達に見守られる様に彼女の娘として、育てられた見崎鳴と同じ命を分けた双子の妹、未咲は身を寄せ合っていた。二人の吐息以外に聞こえるのは耳を澄まさないと聞こえない程の小さな雨音だけだった。
 「おいで…」
 蝋の様に純白の肌、蒼く透き通った人形の眼と中学生時代の特徴はそのままに大人の女性に成長した見崎鳴、どこか、霧果に似てはいたが、未咲を見る眼は優しく、霧果よりも冷たい印象はない。
 「そうだね…。あの子も待っているもんね…」
 双子の姉妹だけあって、鳴にそっくりと言われながらも、根明で子供っぽさが抜けないとからかわれてきた未咲、大人になってもそれは変わらなかったが、大人の女性の色気も持ち合わせ、「可愛いお姉さん」と彼女を知る人達は言うが、その度に「鳴みたいに美人になりたい!」と拗ねる。鳴はそれが堪らなく、可愛くて仕方がない。逢瀬やベッドの上で自分と同じ命を分けていながらも愛らしい、未咲を可愛がるのが、至福の時だった。未咲も大人びていながらも妹というよりも恋人に甘い、鳴が大好きだった。甘えて、小悪魔的なアプローチで迫ると恥ずかしがる時が特に愛おしく思える。
 「私の可愛い半身…♥」
 「もうすぐ、姉妹じゃなくなるんだから、その呼び方の方が良いかもね…♥」
 家庭の事情で血の繋がった双子の姉妹でありながら、姉妹として、生きる事ができなかった、見崎鳴と藤岡未咲、一緒に遊んだり、こっそり、この館で会う時、鳴は姉妹と呼べなくても、繋がりたいという想いがあったのか、同じ命を分けた未咲を「半身」と呼び、じゃれあって、絆を深めていく内に愛情が芽生えぬハズはなく、この双子の少女達は恋に落ちた。女の子同士、血の繋がり、そんなものはお互いの想いで塗り潰され、≪現象≫の存在を知り、未咲を何とか夜見山の外に逃がし、二人は生き延びる事ができた。人形作家となり、霧果のアトリエ兼、自宅のこの店を継いで、未咲を呼び寄せた。大人になってからは以前にも増して、女性同士の愛に溺れてゆき、百合カップルになるだけでは飽き足らず、ついには、姉妹の禁忌を犯そうとしていたのだった…

◆◆◆

 「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。工房m」の奥深く、ウエディングドレスを着た人形が2体、この工房で霧果が産んであげられなかった我が子を想い、作った鳴や霧果によく似た小中学生位の背丈の少女の球体関節人形もソファーに腰かけていた。アンティークショップで揃えた燭台、十字架、絨毯やクロスで彩られたその部屋は拙いものの、ヨーロッパの教会を思わせた。愛し合う女性が二人で頬を紅潮させ、どちらともなく、甘い声で囁き合う。ここまで言えば、説明の必要はあまりないかも知れない。
 「ミサキ…見てるかな?」
 未咲はそっと耳を澄ます。テレビのノイズみたいな雨音に紛れ、小さな少女の声を聞いた様な気がした。生まれる事ができなかった霧果の子なのか、子を想う霧果の悲しみや愛情が生み出した幻なのか、未咲は時折、少女の声を聞き、夢に自分達や霧果に似た少女が語り掛けてきた事もある。鳴は何も言わないが、彼女の人形の眼も≪死の色≫とは違う、何かが映るらしく、たまに「未咲は私のだから」とヤキモチを妬く、子供の様な態度を取る。
 「ミサキにも見せつけてあげようね♥」
 「鳴、あんまり意地悪しちゃダメ♥」
 鳴と未咲はじゃれ合いながら、服を脱がせ合い、人形に着せている純白のウェディングドレスに手をかける。商品の人形に着せる為という理由をつけて、特注したウェディングドレス、高い買い物ではあったが、この日の為の出費と考えれば、嬉しくさえあった。
 「綺麗…♥」
 未咲が見惚れるのも無理はない。飾り気こそない、シックなデザインでこそあるが、胸元を飾るリボンとフリルが際立たせている。身体のラインを純白のドレスがクッキリと浮き彫りにし、ドレスの下の女性の色香を放つ肉体のより肉感的で魅惑的なものに見せている。薔薇の髪飾りも紅、黄、白と色とりどりで眼を引くだけでなく、この婚礼に相応しい物を選んでいる。
 「未咲も可愛いよ…♥」
 胸元に飾り気こそないが、大人の女性の豊満な乳房が純白のドレスで包まれ、却って、魅惑的に見える。未咲が子供の頃に憧れたお姫様のドレスを意識して、特にスカートのフリルは大きく、派手になっている。お洒落なカチューシャとは不釣り合いの普段、髪を結うのに用いている大きなリボンが未咲らしさを感じさせ、鳴には愛らしく、映る。
 (お姉ちゃん達…綺麗♥)
 二人の花嫁さんにはミサキと呼んでいる少女の歓喜の声が聞こえた様な気がして、お互いに眼を合わせ、クスクスと笑う。
 「良いのかな…私達は姉妹なのに……」
 未咲は恥ずかしそうに鳴を見つめる。鳴はふふっと笑い、未咲の頬に触れる。
 「姉妹じゃなくて、百合夫婦に、永遠に私の愛しい半身になるんだよ?」
 鳴は未咲の細い指に銀色のリングを嵌める。女性から、それも血の繋がった姉妹と指輪交換をする事に照れながら、背徳感を抱きながらも未咲も鳴の白い蝋細工の様に綺麗な指に嵌める。
 「鳴も私の愛しい愛しい半身になるんだ…。ずっと…死ぬまで一緒だから♥」
 人形の眼と紅い瞳、両方の眼球に映る可愛い花嫁さんを抱き、鳴は口づける。未咲もそっと瞳を閉じ、人形の様に美しい花嫁さんに身を委ねる。

 見崎鳴と藤岡未咲の百合夫婦に、半身になる為の儀式、百合婚をする事で女性同士の愛の成就を願うのだった。そして、ここで奇跡が生まれ様としていた…

◆◆◆

 二人の花嫁さんはいつも姉妹同士で交わうベッドで肢体を絡ませていた。女性同士の結婚式、初夜も当然ながら、花嫁同士で過ごすのだが、先までの初々しさはない。艶かしく、浅ましく、最愛の花嫁さんの身体を弄び、肉慾へと溺れてゆく。人形用という建前こそあれ、シックなウェディングドレスが体内から分泌された卑猥な蜜で汚濁してゆく、汗で張り付いたドレスは姉妹同士でありながらも禁じられた愛や欲望に溺れる、彼女らの心の内を映しているかの様だ。
 「ウエディングドレス着てても、おっぱい……気持ちぃぃい…」
 「エッチな花嫁さんだな♥♥♥鳴ぃぃ♥」
 鳴と未咲はおっぱい同士でキスしながら、ドレス越しに伝わる熱と乳首同士交わる感触に酔う。子猫が甘噛みでもする様に口づけをかまし、口内をドロドロと溶かす様に弄ぶ様に犯し尽くそうとする。口づけから解放されると唾液が白いドレスを汚していく。鳴はそれを拭うついでに未咲の鎖骨や露出している胸元にキスの雨を降らす。
 「お返しだぁぁあ♥♥」
 未咲は自分に圧し掛かっている鳴の身体を弄る。身体に密着したウェディングドレスがまるで土砂降りにあったかの様にグッショリと濡れており、それが自分やこの愛しい恋人、花嫁のものだと思うと頭の中が熱くなり、心音も大きくなってゆく。
 「未咲ぃぃい!!イク♥♥♥」
 鳴は未咲に抱きつき、絶頂に達する、鳴から放たれる濁ったマグマが未咲のフリルいっぱいのドレスも己のシンプルなドレスもどろりと穢す。

 ウェディングドレスは二人の花嫁さんの肉慾をぶつけあった結果、異臭を放ち、汚れ切った布切れと化していた。鳴はすぐに脱ぎ捨てて、生まれたままの姿になる。未咲も純白のドレスで隠されていた蝋の人形の様に白い肌、女性の妖艶さに加え、玉の様な汗が髪が張り付き、局部も泥濘の様に蜜で汚れたインモラルさにほおっと見惚れている。鳴はそんな未咲にお構いなしにフリルが目を引く、未咲のウェディングドレスに手を掛ける。
 「恥ずかしいよ♥♥♥ってか、お嫁さんにこんな事して良いの?」
 恥じらう、未咲のウェディングドレスを脱がしながら、鳴は喉の奥から笑い声が漏れる。そして、女性を堕とす冷たい悪魔の様なそんな風にも未咲は見えた。
 「私の薔薇をご覧…」
 「鳴?」
 鳴は髪飾りの薔薇を手に取り、小さな女の子を宥める様に未咲に囁く。
 「花言葉で赤い薔薇は愛情と情熱、黄色い薔薇は不貞は表すの…」
 不貞という言葉に反応して、未咲は顔を赤くする。
 「鳴!!!!!ひっっどいいぃぃぃ!!!」
 幼女の様に駄々を捏ねる未咲が可愛くて仕方ない鳴は笑いを堪えながら、耳元で「白い薔薇の花言葉」を囁いた。
 自分達の愛は背徳的と知りながらも今日まで、一緒にいた、そんな未咲、引いては鳴の心に刺さるものだった。未咲は抵抗も口答えもできなくなり、鳴はうふっと笑い、剥ぎ取ったウェディングドレスを放る。

◆◆◆

 「ああっっ♥♥鳴ぃぃぃぃ♥」
 純白のドレスを脱ぎ捨て、二人の花嫁さんはグジャグジャと愛液や汗に塗れ、愛し合う。
 「みしゃきぃぃぃ♥♥」
 薔薇の髪飾り以外、何も身につけていない鳴の蝋人形の様に白く、一方で女性の肉感的な官能さも併せ持つ身体が生まれたままの姿で鳴の責めに喘ぐ未咲を押し倒す。何度もキスをしている内にお互いの思考もドロドロと溶けてしまっている。歯型やキスマークだらけの乳房を鳴は貪る。お互いの肉体から伝わる熱もまた愛しい。この体温をより感じる術をこの姉妹は理解していた。
 「うあああぁぁぁああ♥♥♥」
 「未咲!!!!!!みしゃきぃぃぃ!!!愛してりゅぅぅぅう♥♥」
 鳴の不気味なくらいまっ白い肢体と未咲の少し日に焼かれている肢体が絡み合う。お互いの女陰が激しく重なり、グジャグジャと愛液と汗が混じり合う音、肉がぶつかり合うパンっとパンっという音が人形の見守る館に木霊し、窓ガラスやアスファルトを叩く雨の音をも打ち消す程に。女陰と女陰の口づけ、お互いの体温は肌を貫き、体内や性器をも毒す。
 (鳴の奴…あんな殺し文句………)
 未咲は鳴に囁かれた白薔薇の花言葉を思い出し、より恥ずかしく、そして、姉妹故の繋がりと悦びに打ち震え、よりこの激しい行為に溺れてゆく。その殺し文句は…
 (私はあなたにふさわしい)
 鳴もまた、自身に、未咲に刻んだ白薔薇の意味、その白い呪縛で侵される事を心地良く、思い、未咲に自身を重ね、グラインドする力をより強く荒々しくなる。ドクドクドクっとお腹の中で煮え滾るマグマを未咲の白く、豊満な身体に放つ。焼き尽くされる様な熱さで頭の回路が切れ、お腹の中の熱い蜜と共に自身の体内を侵していく。
 「みさきぃぃぃ!!!!!!♥♥♥」
 「めいぃぃぃぃ♥♥♥♥」
 未咲も鳴も女陰から腿、お臍の下までドロドロとした体液に塗れ、お互いの熱に当てられて、果てる。ウェディングドレスは既に花嫁さん二人の熱い体液でグチャグチャに濡れていた。その事も気にも留めずに鳴は突っ伏した。
 「ああっっ!!!!お腹が熱いぃぃ!!!ドクンドクンっていってる!!!」
 未咲は体内に今まで感じた事のない高温、そして、もう一つ、心臓が増えたかの様な激しい鼓動に悶え、苦しむ。痺れていく頭の中に少女の声を聞いた…
 (これで未咲ママと一緒♥)
 それ以降、ミサキの声が聞こえる事はなかった。そして、新しい命となり、未咲の胎内に宿り、生まれ変わろうとしていた事、百合妊娠という奇跡に遭遇した事を未咲も鳴も知る由はなかった…

◆◆◆

 百合婚という禁忌を犯し、姉妹から、血の繋がった百合夫婦になったあの日から、幾星霜、テレビのノイズの様な雨が降り注ぐ夜、百合夫婦の契りを結んだ時と同じく、鳴と未咲は生まれたままの姿で白いシーツの上で愛し合っていた。一つ、違いがあるとすれば、鳴に責められている未咲のお腹が不自然な程、大きく、膨らんでいた。
 「鳴パパ♥この子は鳴と私の子なんだから、もっと優しくしてよぉ♥」
 未咲は甘ったるい声を上げ、鳴と新しい命が宿るお腹に眼をやる。
 「ちゃんと私の事を見なさい。それに誰がパパだ?」
 鳴は未咲の手首を押さえ、乱暴に口づける。鳴に比べ、少し幼く感じる眼を瞑り、鳴に口内を犯される快楽、弄られる度に胎内で何かがより激しく蠢くのを感じる。
 「ああっ♥」
 未咲を口づけから解放すると鳴はチュッと未咲の乳首に唾液で濡れた唇で触れる。クチュクチュっと未咲の乳首を責める。その卑猥な音を未咲に、母親の喘ぎや心音や乳首を舐る音を胎内に宿る自分達の子に聞かせる様に…
 「今日は世間で言うところの父の日だし良いじゃん♥それに鳴が私を孕ませた癖に♥」
 この姉妹はお互いを愛し合うあまり、カップルとなり、百合夫婦という形で結ばれた。この儀式のおかげか、二人の愛が起こしたのか、百合妊娠という奇跡の下、未咲はついに鳴の子供を宿したのだった。そういう意味では、未咲の「鳴パパ」という言葉は相応しい文句かも知れない。しかし、女性同士の間で子供が生まれるのだ、鳴は思いついた事を未咲の耳元で息も絶え絶えに聞かせてやる。
 「姉妹で作った子だもの…。私と未咲…二人で一緒にママになろう♥」
 未咲と鳴、百合妊娠で愛娘を成した二人のママはベッドでお互い、果てるまで、絡み合った。それに応える様に未咲のお腹の中の胎動も大きくなってゆく、普通の人間の子よりも時間をかけながら、未咲と繋がり、百合夫婦となった姉妹の家族になれる日をミサキは夢見ていた…



​ FIN

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